5.「どうせ、オレは『バカ』なんだから」
初めての漢字練習の日。
漢字スキルを使って練習をしていったのですが・・・・。
途中から、「キレ始めて」きました。
「オレは字が下手くそなんだから、やってもしょうがない。」
そんなことを言い始め、椅子の下にしゃがみこんでしまったのです。しまいには
「オレはバカなんだ。オレはバカなんだ。」
と言いながら、髪の毛を引っぱり──何本抜けたことか。
「そんなことはないよ。きれいに書けているではないですか。」
と言ったところで、聞く耳持たず。
ちなみに、この日は週末。このまま帰宅しましたが、来週はいったいどうなることやら。本当に困ったなと思った一日でした。
6.それでも
明くる月曜日。
「おはようございます。」
Aはいつも通り、ニコニコしながら教室に入ってきました。先週のことはまるでなかったかのように。
とてもうれしかったのですが、気にもなったので、試しにこんなことをしてみました。
「いやあAくん。今のあいさつ、素晴らしいね。とっても素敵だったので、もう一回聞きたいのだけれどいいかな。廊下に出てやり直してくれますか。」
そう言うとAくんは
「わかりました。」
と言って、それ以上の声で
「おはようございます!」
──これを聞いてホッとしました。
7.漢字小テストで「100点!」
週に1度ほどのペースで行っている漢字小テスト。
Aは、2回目のテストで100点を取りました。「はね」がはっきりしていなかったり、長さが微妙なものもあったりしたので、きちんと採点すれば減点されても仕方のないものでしたが、目をつぶりました。
もっとも、テストの前に何度も練習していたので、ふつうならこのくらいできて当然なのですが、Aがきちんとテストを受け、がんばって書いたのはうれしいものでした。
Aは、勉強ができないわけではありません。むしろ、平均以上の力はありそうです。
このことを母親にも伝えたいもの。しかし、だらしのないA。Aにテストを渡しても、母親に届くかどうかわかりません。
そこで、
「Aくん、すごいね!
ところで、Aくん、このテスト預かってもいいですか。あさって家庭訪問があるでしょ。その時に、このテストをお母さんに渡したいんだけれど。」
そう言うと、Aは「いいです。」と承諾してくれました。
「ありがとう。お母さんにいっぱいほめておくからね。」
8.字をきれいに書く。
「オレは字が汚いから、書くのは嫌だ。」
そう言っていたA。確かに、絶望的な気持ちになるくらいの字です。読めないものもあります。
それでも、ひたすらほめ続けました。(ほとんどの)汚い字には目をつぶり、まともな字(きれいな字ではありません)を探しては、◎をつけていきました。
そうしたところ、少しずつ、少しずつですが、読める字が書けるようになってきました。
2週間ほどたち、次の段階に移りました。
注意を受け入れ、書き直すか試してみたのです。
「この字、おしいなぁ。この部分だけ直すととてもきれいになるんだけど、直してみませんか?」
どんな反応を示すか、期待半分で言ってみましたが、即座に
「わかりました。」
書き直したのを見ると、多少ですがよくなりました。大いにほめたことは言うまでもありません。
今(6月)は、4月の頃とは考えられないくらいの字が書けるようになってきています。本人も、自信がついてきたようです。
もちろん、まだまだですが。 (つづく)
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