2023/05/13

Aくんとの出会い その4

 9.箸の持ち方に挑戦

 私は、どのクラスを受け持っても、必ず箸の持ち方の練習をすることにしています。

 箸の持ち方──これは、本来、家でやるべきことであるとは思うのですが。

 さて、4月当初、このクラスで「合格」と言える子は一人もいませんでした。

 Aの持ち方もひどいものでした。

 そこで、全員にわりばしを渡し、練習に取り組みました。

 ちなみに、正しい持ち方ができるようになるためには、使う筋肉を鍛えなければいけません。できていない子が挑戦すると、親指と人差し指の間のつけ根の筋肉がものすごく痛くなります。

 これを乗り越えるとできるようになっていくのですが──。

  Aはがんばってできるようになりました。

「『オレには無理。』と言ってあきらめるかもしれないな。」──そんなふうに思っていたのだが、よい意味で裏切られました。

10.「2組の○○くんにぶたれました」

 ある日、Aがそのように訴えてきました。

 きっとAにも悪いところがあったのでしょう。けんかの後始末など面倒なことですが、これはチャンスと前向きにとらえ、二人を呼んで話をしました。

 ちなみに、私はこの手の場合、けんかの理由は聞かないことにしています。

「何でそんなことをしたのですか。」

 このように聞くと、必ずこう返ってきます。

「だって、△△くんが『バカ』って言ってきたからです。」

 自分は棚に上げ、相手の悪いところだけ指摘します。100人いたら100人ともそうするでしょう。

 理由を聞くと言うことは、弁明の機会を与えるのと同じことです。これでは反省につながりません。

 だから、理由は聞きません。聞くとしたら、互いに謝り、解決した後にします。

 その代わり、「はい。」としか言えない質問をします。

 こんな感じに──実際は、もう少し手順を踏むのですが。

「◯◯くん、Aくんのことをたたいたんだってね。」 「はい。」

「◯◯くんほどの人がそんなことをするなんて、よっぽどの理由があったんでしょ。」 「はい。」

「でも、今思えば、そんなことをしないで、ほかの方法があったのではないですか。」 「はい。」

「では、たたいてしまったことはまずかったなと思いますね。」 「はい。」

「では、その分だけ謝りませんか。」 「はい。」

 これを聞いていたAにも、

「◯◯くんにたたかれていやだったね。」 「はい。」

「でも、Aくんも◯◯くんが腹を立てるようなこと言ったりしたのではないですか。」 「はい。」

──これらのやりとりを聞いて、だいぶ素直になってきたと感じました。     (つづく)


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学級だより №64