№ 61・62 2024年6月18日
前号――「ひらがな」について――のつづきです。
先週の火曜日と水曜日、連絡帳にこのようなことを書きました──「宿題 ひらがなプリント」
保護者の皆さまは、これを読んで「あれ?」と思われたかもしれませんね。「1年生ではないのに、“ひらがなの練習”だなんて。」
これは、こういったことからです。
先日の授業で、子どもたちにこんな質問をしました。
「漢字とひらがな、きれいに書くのが難しいのは、どちらだと思いますか。」
これに対する子どもたちの考えは、「漢字」と「ひらがな」が半々程度でした。
さて、子どもたちの答えを受けて、このような話をしました。
「漢字はたくさんあるので、覚えるのは大変ですね。でも、きれいに書くのが難しいのは、ひらがなだと思います。」
漢字よりもひらがなの方が形を整えるのが難しい──その理由はいくつかあります。
まず、ひらがなはそれぞれ様々な形をしているということです。「る」と「ろ」、「ね」と「れ」のように、似た字もあったりしますが、基本的にどの字も形が違います。
それに対し、漢字は、右の表のように、わずか10この「部品」から成り立っています。この「部品」を組み合わせて、無数の漢字が作られているのです。
また、漢字は、「たてかく」や「よこかく」のように、直線が多いのに対し、ひらがなは曲線が多く使われています。これが、形を整えるのを難しくさせています。
その難しいひらがなですが、きちんと練習するのは1年生の一度きりです。
もちろん、漢字も「新出漢字」として練習するのは一度きりです。
しかし、中学年や高学年で習う漢字は、「へん」と「つくり」のように、下の学年で習った漢字を組み合わせたものが多いです。ですから、「新出漢字」としての練習と同時に、「既習漢字」の復習もしていると言えるのです。
それに対して、ひらがなの練習は、1年生の夏休み前までで終わります。そのあとの「文字の練習」は、もっぱら漢字です。ひらがなをきちんと練習することは、ほとんどないでしょう。ですから、大人の中にも、形の悪いひらがなを書く人がいたりします。
たとえば、「な」という字。「な」のななめせんは、本来、短く書くのがふつうですが、「た」のように長く書く人がいます。
何をかくそう、私自身がそうでした。それも恥ずかしながら、教員になるまで、ずっと、そのように書いていました。子どもたちにその話をしたら、みんな大笑い。
たとえば、「れ」という字。たての線は、中央より左に書くのがよいわけですが、真ん中に書いている子、結構いたりします。
たとえば、はね。一般にひらがなでは、はねた
先に続けて書くわけですが、それを意識していない子もいたりします。
書き順を間違えて覚えている子も。
また、子どもたちにとって、漢字は「大人の字」、ひらがなは「子どもが使う幼稚な字」──そんなイメージがあるようです。そのためでしょうか、宿題で書いた字を見てみると、漢字はていねいに書いていますが、ひらがなは手を抜いて書いている──そんな子がけっこういます。
そこで、先週の国語の時間、漢字の練習をお休みして、ひらがなの練習に取り組み、宿題にも出しました。
子どもたち、だいぶ上手になりました。しかし、お手本が手元にあればきれいに書けるけれど、ないとくせのある字になってしまう――まだまだそういう子がほとんどです。
とは言っても、この程度の練習できれいな字が書けるようになるはずはありません。
また、折を見て練習をしていきたいと思っています。
ちなみに、私はどの学年を受け持っても、ひらがなの復習をすることにしていますが、上の学年を受け持つと、必ずこんな声が聞かれます。
「私、“す”って、こういうふうに書くの、初めて知りました。」