2023/08/14

漢字の指導 その5

 私は、新卒の頃、子どもの漢字のノートに大きく「はなまる」をつけて返していました。「わぁ、『はなまる』をつけてもらった!」

と喜んでくれると思ったからです。

確かに、初日はそうでした。しかし、感激してくれたのはほんの数日間だけ。

きれいに書いても、適当に書いても「はなまる」なのですから、モチベーションを保てるわけはありません。子どもたちは、次第に手を抜くようになっていきました。

今はきれいに書けた字の右上に「◎」をつけ、コメントを添えるようにしています。手間はかかりますが、この方がはるかに効果的です。
しかし、ただ「◎」をつければ良いというものではありません。
せっかく時間をかけて「◎」をつけ続けたとしても、下の①~③がなければ、子どもはやる気を出しません。
上手にもなりません。
   ①担任の評価が心のこもったものであること。
   ②子どもが「どのように書けばきれいになるか」を理解すること。
   ③子どもが「上手になった」と実感できること。
この①~③があるからこそ、子どもは面倒な宿題であっても一生懸命取り組むのです。
そのうち、①について。

D・カーネギーは「人を動かす」の中でこのように述べています。

人を動かす秘訣は、この世にただ一つしかない。この事実に気づいている人は、はなはだ少ないよ
うに思われる。しかし、人を動かす秘訣は、間違いなく、一つしかないのである。すなわち、自ら動
きたくなる気持ちを起こさせること──これが、秘訣だ。
もちろん、相手の胸にピストルを突きつけて、腕時計を差し出したくなる気持ちを起こさせること
はできる。従業員を首切りでおどして、協力させることもできる──少なくとも、監視の目を向けて
いる間だけは。
鞭やおどし言葉で子どもを好きなように動かすこともできる。しかし、こういうお粗末な方法には、
常に好ましくない跳ね返りがつきものだ。
人を動かすには、相手の欲しているものを与えるのが、唯一の方法である。
(中略)
人間は、何を欲しがるのか?──たとえ、欲しいものはあまりないような人にも、あくまでも手に
入れないと承知できないほど欲しいものが、いくつかはあるはずだ。普通の人間なら、まず、次のよ
うなものを欲しがるだろう。
1・健康と長寿 2・食物 3・睡眠
4・金銭および金銭によって買えるもの
(中略)
このような欲求は、大抵は満たすことができるものだが、一つだけ例外がある。この欲求は、食物
や睡眠の欲求同様になかなか根強く、しかも、めったに満たされることがないものなのだ。
つまり、8番目の“自己の重要感”がそれで、フロイトのいう“偉くなりたいという願望”であり、
デューイの“重要人物たらんとする欲求”である。
優れた心理学者ウィリアム・ジェームズは、「人間の持つ性情のうちで最も強いものは、他人に認
められることを渇望する気持ちである」という。ここで、ジェームズが希望するとか待望するとかい
うなまぬるいことばを使わず、あえて渇望するといっていることに注意されたい。
これこそ人間の心を絶えずゆさぶっている焼けつくような渇きである。
(中略)
「なんだ、他愛のない! お世辞! ご機嫌とり! 古くさい手だ! そんな手は、とっくに実験ずみだ!
知性のある人間には、てんで効き目がない!」
読者のうちには、ここまで読んで、こう思っている方もあるだろう。
もちろん、お世辞は、分別のある人には、まず通用しないものだ、お世辞というのは、浅薄で、利
己的で、誠意のかけらもない。それが通用しなくてあたりまえだり、また、事実、通用しない。
お世辞と感嘆のことばとはどう違うか? 答えは、簡単である。後者は事実であり、前者は真実で
はない。後者は心から出るが、前者は口から出る。後者は没我的で、前者は利己的である。
(後略)

            D・カーネギー「人を動かす」(創元社)

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学級だより №64