7,ふらつきを直す
とは言っても、これで問題が解決したわけではありません。Bの問題行動を改善しなければ、クラスメイトが心底受け入れてくれるわけはないからです。
まだ、スタートラインに立ったばかりです。
まずは、朝集会時のふらつきを直す──ここから始めることにしました。
ある日のこと、Bと二人で話をしました。
「Bくん、Bくん。Bくんって、朝会で校長先生が話をしているとき、きちんと立っていないで、歩きまわったりしているよね。」
これに対して、Bは否定をしませんでした。黙ってうなずきます。
「でも、それっておかしくないですか。みんなきちんと立っているのに。第一、校長先生に失礼ですよね。」
これにも、Bはうなずきました。
「そうしたら、Bくん。これからはきちんと立つようにがんばってみませんか。」
これにもうなずいてほしかったが、果たして──Bは一言、「わかった。」
「うれしいねぇ。では約束だよ。朝会のとき、先生はBくんのこと、前の方からずっと見ています。きちんとできたら、Bくんのこと、いっぱいほめるからね。ダメだったら叱るよ。」
このことによって、「約束を守ったらほめてもらう。」「約束を違えたら、叱られても仕方がない。」という契約関係が結ばれました。
Aのときもそうでしたが、この契約関係は大事なことであると考えています。「先生だから叱っていい。」「子どもだから叱られても仕方がない。」ではありません。叱る根拠を示すべき、叱られたことを受け入れられる――そういう関係を作るべきです。
そして、次の朝会。
Bのふらつきは直ることがありませんでした。だいたい、この程度の声かけだけでよくなるのなら、こんなに簡単なことはありません。小学校での2年間で培ってきたふらつき。ちょっとやそっとで解消できる代物ではないのです。
それでも、Bはふらついたあと私に視線を送り、目と目が合うと「しまった。」という顔をし、元の場所に戻る──そういったことが何度かありました。私との約束を守ろうという気持ちだけは感じられました。
今までがマイナス100点だとしたら、その日はマイナス80点ぐらいはあげられます。
ということは20点ほどはほめることができるというわけです。
「Bくん、ふらついてはいけないと思ってがんばっていたね。これからも、そうしていけますか。」
「いける。」
8.離任式で
この取り組みをくり返すうち、Bのふらつきは徐々に解消されていきました。1か月ほど経つと、他の子とあまり変わらないほどになっていったのです。
そして、5月初めの離任式でのこと。
離任式は、体育館で行います。そして、離任者の話を聞くわけですが、長い時間かかるので、子どもたちは体育座りをすることになっていました。
Bは、大柄なためか、体育座りをすることができません。片足は曲げ、もう片足は前に出すようにして座ります。これも直したいところですが、この時は目をつぶりました。
さて、そのときのB。姿勢はお世辞にも良いとは言えませんでしたが、それでも1時間近く、その場を動くことはなかったのです。Bは離任者とは一切関わりはなく、退屈な時間であったでしょうに。
その様子を見て、よくここまできてくれた、これならもう大丈夫──そんなふうに思いました。
しかし、このあと事件が起きたのです。 (つづく)
※「おにぎり学級」への投稿は、今年はこれでおしまいにします。
読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
来年も、どうぞよろしくお願いします――できれば、感想など寄せていただけるとうれしいです。
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